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第12回モビリティデザインコンテスト受賞者インタビュー

「表彰式と講習会を終えて思うこと。そして、応募する皆さんへ」

この日、表彰式とスケッチ講習会を終えたばかりの受賞者の皆さんに、表彰式や講習会の感想、今回受賞したことで将来に対する考え方に変化があったかなど、今の気持ちを率直に聞いてみました。講習会で得られたことも、作品への取組み方も人それぞれ。これから応募される皆さんの参考になるアドバイスもきっとあるはず!

【表彰式直後の記念撮影】左より、寒河江美晴さん(ダビンチ賞 高校生の部)、峯岸季市さん(審査員特別賞)、 藤木真優さん(審査員特別賞)、山口レオン剛史さん(モビリティデザイン大賞)、鵜殿正基さん(モビリティデザイン賞 高校生の部)、小路裕紀さん(モビリティデザイン賞 中学生の部)

Q1授賞式を終えて、今の率直な感想を教えてください。

「!ネットで見たことある人・・」「ついに大賞・・」「リアルな授賞式はやっぱり嬉しい」「去年は佳作にも入れなかったのに・・」それぞれの感慨深さが交錯する授賞式。

寒河江
率直に選ばれてよかったなと思う気持ちと、会場では去年や何年か前の受賞作品も参考に見させてもらったのですが、「あ、その時に受賞していた人だ!」という方達が今年も結構いて、その人達の新しい作品や顔も見ることができて、すごく新鮮な気持ちでした。
峯岸
寒河江さんと同じで、「このお二人(山口さんと鵜殿さん)、ネットで見たことあるな」という人達が実際にいるので、なんというか面白かったです。本当にこういうイベントが実在するんだ、と思いました。
藤木
会場に入った時に大勢の偉そうな人たちがいて緊張しました。賞状を受け取った時にやっと受賞したという実感が湧きました。受賞を知らされた時はよくわからなかったのですけど、今日賞状を受け取って初めて喜びというか、実感できたなと思いました。
山口
昨年は(ダビンチ賞の中学生の部門だったので)順番的に先頭で表彰を受けたのですが、今年はついに大賞を獲ることができてうれしかったです。他の受賞者の作品も見ることができ、みんなの考え方とかもわかって楽しかったです。
【大賞表彰状授与】昨年のダビンチ賞受賞に続き2度目の応募で大賞を獲得した山口さん。自動車技術会 東常務理事(当時)と。
鵜殿
僕は前に受賞したことはあるのですが、授賞式はコロナ禍でオンラインでした。実際に会場に来て授賞式を経験したのは初めてだったので、とても新鮮でした。周りにたくさんの人がいるので緊張はしましたが、実際に賞状をもらったりできて本当に嬉しかったです。
司会
オンラインと比べると、やっぱりリアルでやったほうがいいというか、嬉しかったですか。
鵜殿
やっぱり嬉しいですね。緊張はしますけど、リアルでやるのは。
小路
僕は昨年、中1の時にも一回応募したのですが佳作にも入らなくて。今回佳作に入って次に賞に選ばれたらいいなって思ってたんですけど、いきなり賞に選ばれたのですっごい嬉しかったです。いろんな人がいて、その人たちと喋れて学べたので、嬉しいし楽しいし学びもあってすごく充実した時間でした。
司会
いろんな人っていうのは会場にいた大人の人達のことですか?
小路
そうです。

Q2.プロのモビリティデザイナーによるスケッチ講習会の感想を聞かせてもらえますか?

「プロの仕事を目の当たりにして、やりたかったことが出来るようになるワクワク感。自分の作品を詳しいところまで見てくれて、想像を超えた魅力を引き出してくれたのが嬉しい。」

峯岸
表彰式より楽しみだったのでよかったです。プロのデザイナーの方とは、お話しをする機会さえ少ないのに、具体的に技術を教わるっていうのが・・。大学に行って学ぶようなことを教えてもらったりしたので、進路を決めるモチベーションにもなりますし、自分がやりたかったことができるようになるテクニックがどんどん増えていく楽しさを感じました。「クルマやバイクが好きなんだな、この人達」って思いました。
【スケッチ講習】やりたいことができるようになるテクニックがどんどん増えていく楽しさを感じたという峯岸さん。
藤木
液タブ(液晶タブレット)を触ることがあまりなくて、液タブで描いたのは今日が初めてだったんですけれども、こんなにやることが多いのかと。こんなにプロの人たちは細かく工程を踏んでデザインをしてるんだなあっていうのを目の当たりにして、楽しい反面、難しいというか厳しい世界だなとも思いました。そのことがよりカッコいいというか、デザイナーのかっこよさを実感した時間でした。
司会
細かい工程とはPhotoshop(2D描画ソフト)のレイヤーのことですか?
藤木
そうです。レイヤーをたくさん分けて描いていらっしゃったんですよ。私は今回作品をデジタルで描いたのですが、そこまでレイヤーとか分けてなくて。こんなにも細かく分けて色相を踏んで描くんだなあっていうのを初めて学んだので、そこがすごく驚きでした。
【スケッチ講習】プロの仕事の工程の細かさに驚いたという藤木さん。初めての液タブに取り組む表情は真剣そのもの。
山口
今回の作品は自分の中では結構満足していたので、どのように改良されるのか楽しみでした。実際に今日改良された作品を見て、詳しいところまで見て頂けているなと思いました。ここの形がちょっと違うとか、そういうことが聞けて本当に良かったです。
司会
その詳しいことというのは造形的な話が中心ですか?山口さんは今回色々な機能を作品に織り込まれていましたが、この機能だったらこういう形がいいよとか、機能に関連したことでしたか?
山口
今日は造形が中心でした。あと昨年より講習時間が少し長くなって、より集中できて良かったかなと思います。
【スケッチ講習】どう改良されるか楽しみだったという山口さん。実際に見て、詳しいところまで見てくれていると感じた。
鵜殿
自分の描いたデザインが毎回ブラッシュアップされてかっこよくなるのはわかっているので、今回も楽しみでした。自分の想像を超えてくるかっこよさや考えつかなかったこと、意識できなかった線がよりきれいになっていたり、そうした形の良さや魅力を引き出してくれたのが本当に嬉しくて、しかもその技術が本当にすごいなと思いました。今回手描きとデジタルの両方をやりましたが、自分はデジタルをあまり触れてこなかったのでそれも勉強になりました。手描きの方も自分にはない技術をたくさん教わって本当に嬉しかったです。
【スケッチ講習】自分の想像を超えて、作品の魅力を引き出してくれることが本当に嬉しかったという鵜殿さん。
小路
僕の描いた絵の、いい意味で悪いところを突っついてもらって、基本的なところとか色の塗り方とか。僕は塗り方が下手でぼやけたりしていたんですけど、そういうところも描き方とか陰影のつけ方、ちょっとした細かいところからしっかり教えてもらったのですっごい良かったです。
司会
描き方の基礎的な部分を教えてくれる時間はありましたか?
小路
はい。タイヤの楕円や直線の描き方とか。あとそうした楕円や直線を描き始める前にやる、手のウォーミングアップみたいなやり方とか順番を教えてもらったので、自分でもやっていきたいと思います。
【スケッチ講習】自分の弱みを見つけてくれて基本的な描き方もしっかり教えてもらって嬉しかったという小路さん。
寒河江
今回提出した作品をプロのデザイナーさんに改良してもらって、まとめ直してもらったのですが、私の作品をベースにして実際にプロの仕事の進め方をしてくださっているのは、すごく参考になりました。私だけかもしれなくて個人的な感想ですけど、一回CGに起こして立体に見えるようにしてから、それをまた綺麗にまとめ直すっていう工程を踏んでいたのが面白くって。ああこういうのを実際にやっているんだって、この目で肉眼で見られたのがすごく楽しかったです。
司会
3Dデータで立体としてリップルを作って、いろんな角度から見てみて、このビューが魅力的だねって、2Dでスケッチを描き起こした感じですか?
寒河江
そうです。「3Dをベースにトレースしてまとめ直すっていうのもやるよね」みたいな話をしてくれて、ああそういう作業するんだって。初めて知ることばっかりだな、と。
「ここの空間を活かせるよね」とか、造形だけじゃなくて、「実際に動く時にこういう仕組みにしたらもっとよくなるよね」とか言ってくださいました。
【スケッチ講習】自分の作品をベースに実際のプロの仕事の進め方を見られたのが、とても参考になったという寒河江さん。
司会
さっき、山口さんから昨年よりスケッチ講習の時間が長くなって集中できたという話がありましたが、今回初めて手描きとデジタル描画の両方を行うので、時間を前より長くしました。それでも手描きとデジタル両方のスケッチを仕上げなければならなかったので大変だったかと思います。皆さん、正直時間はどうでしたか?
受賞者
(皆さん口々に)「めっちゃ短かったです。」「3時間ぐらいやれますね。」「合宿行っちゃってあと1日やりたいです!」
鵜殿
ガシガシ絵を描くだけじゃなくて、自分が聞きたかったことをデザイナーと話しをしたかったかなっていうのもあります。
司会
今回は絵を描くことに集中するだけで、聞きたいことや話したいことがあっても時間がなかった感じでしょうか。
鵜殿
なかったですね。本当は話すだけでも90分から100分位ほしいくらいですが。もっと時間をくれるならいくらでも延ばせるんですけど、笑。
司会
どんなことが聞きたかったですか?
鵜殿
まず最近の車って、後ろから見た時にフォルムが、車体の下から天井までまっすぐスクエアになっている車が増えていて、どういう理由でこうなっているのかを聞きたかったですね。広さとか、単純に大きく見えるとか理由はあるんでしょうけど。でも台形の方が個人的にはカッコいいかなと思っているので、そういうことを聞いてみたくて。
小路
学校関係や進路のことが聞きたかったです。
山口
今回の受賞作品から離れた一般的なこと、大学についてもそうですし、デザイナーの仕事についても聞きたかったです。
峯岸
デザイナーの個人的な趣味とか、余暇の過ごし方とか。アイデアをどうやって出しているか、そのための気分転換の方法とか。自動車をデザインするのに自動車のことだけ学んでいても、自動車の知識しかないと思うので・・・まさに自分がそうなんですけど。どうやって知識を横に広げるかの方法を聞きたかったですね。

Q3.コンテストに受賞して、将来に対する考え方に変化はありましたか?

「この道を進んでもいいんだ、という自信につながった。」「作品作りを通して、クルマって面白い、と思うきっかけになった。」

藤木
今私は高校の中でデザインコースを専攻していて、1週間に10時間ぐらい授業があります。中学の頃からもデザインの授業はあって、長いことデザインをやってきた中で、ずっとついて回ってきた思いというか、自分なりに極めようとしてきたつもりでも、これを本当に仕事にしていいのかっていうのをずっと迷っていたんです。
今回いろんな方に大々的に自分のデザインしたものを認めていただけて、大きな自信に繋がったので、これからも自分が好きな“デザインする”っていう能力を極めていっていいんだなって、自分の中で納得させることができました。

■藤木 真優さん【審査員特別賞受賞】高校2年

いかにシンプルに、印象に残るデザインに出来るかを悩んだという藤木さん。
今回の作品は、友達とプラネタリウムに訪れた際、そのあまりの非日常的な体験に心身共に癒されたことをもとに、忙しい現代人にとってわずかな移動時間でも心身をいたわることができれば、より豊かな生活がおくれるようになるのではという思いを込めた。
じっとしているより、行動することでアイディアが生まれるという藤木さん。この作品もそうして生み出された。

山口
今までは趣味程度で、あまり自信を持って絵を描くのが好きとか、そこまでは言えるレベルじゃなくても、こういう賞をもらって素晴らしい審査員から認められたっていう気分で、自信を持って絵を描くのが好きって言えるし、これからの将来もそういうことを意識するというか、出来るようになったかなと思います。
司会
山口さんは受賞2度目ですが、昨年と今年での気持ちの違いはありますか?大賞を取ったことで、より自信に繋がっていくかなと思うのですが。山口さんは中学3年生ですが、今後進路を考える時に、今回大賞を受賞したことで、影響を受けそうな感じはありますか?
山口
まあこの道で進んでも未来があるというか、そういう気持ちはあります。
鵜殿
僕はもう中1から今回で5回応募しているので、今回の受賞で特に大きく変わったっていうのはないんですけど、5回出したことによって自分がどんな車を作りたいかとか、どういうデザインをしたいかみたいな信念の方はかなり固まってきたなというふうに思います。
司会
来年受験ですね。最後の一回、大賞を目指してもらえればと思いますが・・
鵜殿
大賞を狙うというよりは、自分が本当に乗りたいものを作る感じですかね。
司会
鵜殿さんの方が大人ですね、笑。確かにそちらの方が大事ですね。
小路
僕も藤木さんと同じで、今回実際にデザインの仕事をしているところを目の当たりにして、その人からちゃんと自分の作品を見てもらって確認してもらえたので、これからも応募を続けて・・大賞・・獲りたいなあなんて思ってます、笑。まずは来年の高校受験を頑張って、そこからデザインの大学とか行きたいです。
司会
受験で一回休むのもありなので・・
鵜殿
ぜひ来年も出してよ。
小路
は、はい・・・じゃあ来年も出します。
鵜殿
自分が受験の時に出したので。息抜きとかにもなりますし、勉強して力抜いた時にふとアイディアとか浮かんできたりとかもするので。そういうのを描いたりするのはいいかなと思います。
司会
先輩のアドバイス、きましたね。
小路
(鵜殿さんに)ありがとうございます。
寒河江
ここに居る人たちってクルマが好きな人が結構多いと思うのですが、私は全然そんなことなくて。藤木さんと同じ学校、同じコースでそこで課題で出たので取り組んだのですが、そもそも私たちの学んでいるコースが、普段平面構成とかであまり立体のことをやらないんです。このコンテストを通じて、ユーザーがいるモビリティというプロダクトを、実際に世の中に存在するかもしれないって仮定しながら考えること、ユーザーの気持ちを考えながらデザインしていくっていうのがすごく新鮮で、クルマって面白いって思うきっかけになりました。そういうのを詳しく学びたい、ポスターとか平面だけじゃなくて、立体のデザインも面白いんだなって思うきっかけになりました。

寒河江 美晴さん【ダビンチ賞 高校生の部】高校2年

色々な視点で客観的に自分の作品を見るのが大事だという寒河江さん。日頃から、作品を親や友人に見せて意見を聞くという。
今回の作品は、車椅子の人が段差や階段で困っている場面に遭遇したことがヒント。座面が水平な状態のまま、スムーズに段差を乗り越えられる仕組みを考えるのが一番大変だった。子供でも大人でも高齢者でも障害があっても、誰もが同じ目線で物事を見られるようになればもっと楽しい社会になるのでは、という思いを込めた。今ハマっているのはデジタル画。

司会
クルマに興味もなかったと思うんですけど、クルマ自体にも興味を持つようになりました?
寒河江
描く時も参考資料として調べたりする過程が絶対にあると思うんですけど、その過程で「あ、こんな形の車があるんだ」とか「こういう考え方が最近は取り入れられているんだ」とか、そういうのを考察したりして、それで車って面白いなって思うようになりました。
峯岸
今美術系の高校にいるのですが、変わらず自分は自動車デザイナーになりたいというのがあって。その夢は変わりないんですが、デザインされたもの、自分がデザインしたものを使う人がいるということと、使われているのを見る人、評価する人がいるっていうことを考えた上で、デザインしないといけないなと思いました。
講師の方々が、デザインは独りよがりではダメだよとおっしゃっていてそれがすごく心に残りました。自分が好きなものだけを作っていてもダメなんだなと。

Q4.絵を描きはじめたきっかけや、描くことが好きだと思ったのはいつごろからですか?

「皆、気づいたら絵を描いていた。クルマや乗り物も好きだから、その好きを絵で表現してきた人。描けば描くほど褒められてどんどん描き続けてきた人。」

山口
僕は小さい時から絵を描くのは好きだったんですが、クルマを好きになったのは、僕の家にはクルマがなくて。それで憧れてクルマのことを調べたりとか、詳しく見てみたりというのがありました。クルマ以外にも乗り物が好きなので、船とか飛行機とか色々あったのですけど、でもクルマに今ちょっとハマってるという感じで。全般的に乗り物が好きっていうのと絵を描くのが好きっていうのがかぶっているという感じです。
鵜殿
僕は気づいた時から絵を描くのが好きで。幼稚園の時とかは、電車とクルマどっちを好きになるかみたいな一般的な子供の感じで。それがクルマの方に道が逸れて?笑。乗り物図鑑のクルマのパートは、殆どが働くクルマの頁で占められているんですけど、乗用車の頁だけずっと見ているような感じで。そんなふうに乗用車の方にガンガン進んできて、クルマと絵と両方好きだったので、その二つの「好き」が合わせられるカーデザインが自然と楽しいなっていうふうになってきました。
小さい時は市販車の次の世代のモデルをデザインすることから始めて、それからだんだん完全なオリジナルのものをつくってみたりとか。今でも基本的に思いついたら紙とかに描くようにしています。
小路
僕の父がクルマが好きで、昔からおもちゃといえばトミカで、家に百台ぐらいあるんですよ。で、僕は気づいた時から絵が好きで、じゃあ何を描くかっていうと、トミカと、テレビで見るレース中継されているスーパーカー。そこから自分のクルマが描きたいと思って、小学校四年生ぐらいの時から自分のクルマを描いて、そこからなんかいろいろ調べて、描き方とかもやってきました。
寒河江
絵を描き始めた年齢は本当にわからなくて、気づいたらずっと描き続けていたみたいな感じなんですが、単純なので、友達とかに「すごい上手だね!」とか「カワイイね!」とか言われると、調子に乗っていっぱい描きたくなっちゃって、それが今までずっと続いちゃってるような感じです。でも、褒めてもらえるっていうのはそれだけ原動力になると思います。
峯岸
絵を描き始めたのとクルマが好きになったのが、どっちが先なのかよくわからないんですけど・・。トミカはうちも超あるんですけど、トミカを手で触って目で眺めて転がして音を聞いて床に寝そべって横から見て「ああ いいな、俺のお気に入りのトミカがある」っていうのを楽しんでいて…多分クルマ好きが先なんだと思うんですけど。じゃあどうやって、見るとか転がす以外の方法で、自分が好きなものを表現できるかなと考えた時に絵を描くっていう手段が一番容易でとっつきやすい手段だった。自己表現の手段みたいな、外部に向かって自分の絵を見てもらうことで自分とはこういう者なんだよ、と表現する手段っていうよりは、自分が好きなものをいろんな角度から見るための一つの手段として絵を描くっていう方法があったんだと思います。

峯岸 季市さん【審査員特別賞】高校2年

普段から自動車やバイクのことを考えている瞬間に最も楽しさを感じるという峯岸さん。応募の動機は、なりたい職業である自動車やバイクのプロダクトデザイナーに繋がる体験ができると思ったから。今回の作品は、気軽に乗れるモビリティがあったらいいな、というところからスタート。具体的なアイディア出しに苦労したが、コンセプトに即した言葉の連想や周囲へ意見を求めたことで解決。自動車やバイクが好きな思いを発展させ、モビリティを使う人の想いを想定することで楽しみながら制作。趣味は自転車いじり。

藤木
私が初めてを描いたのは1歳の時で、秋刀魚(さんま)の絵を描いたらしいんですけど、両親から聞いて、それは自分で覚えてないんですが、物心が着く頃にはもう暇さえあれば絵を描いていました。寒河江さんと似てるんですけど、小学校の時に描けば褒められるみたいな、最高!って感じでずっと絵を描いていたので、ちょっと美術の道に行こうかなと思って女子美*(女子美術大学)の中学に受験することを決めたのが、デザインの道に本格的に進もうと思ったきっかけでした。
司会
そのときから意識としては“デザイン”だったんですか?
藤木
そうですね。明確には決まってなかったんですけど、女子美の中高で油絵とか他にもいろいろ経験してみて、クルマ自体には興味はないんですけど、クルマとかを含めた世に出されるものを、どうやったら人にアピールできるかとか、パッケージデザインとかそういうデザインの方に魅力を持ち始めたので、高校に上がってから本格的にデザインに進んでいこうみたいな感じになりました。

Q5.これからモビリティデザインコンテストに応募してくれる皆さんに、アドバイスをお願いします。

「自分が楽しいと思えるもの、描きたいと思うものを描いた方がいい。」「アイディアを出す時は、極力ネットは使わない方がいい」「じっとしてるより、行動する方がアイディアが出やすい」「これだけは変えない、ブレない根底を決めておく」「色々な視点から作品を見ることは、自分を客観視すること」

司会
最後の質問になります。これから応募してくれる皆さんに、参考になるようなこととかアドバイスがあれば聞かせてください。皆さんも作品を作っている時に苦労されたり、行き詰ったりすることとかありますよね。そういうときにこんなことを考えるといいよね、とか、最初のアイディアの発想の段階とか、着眼点の見つけ方とかどんなことでも結構です。
鵜殿
社会問題とかいろいろ考えて作らなければいけないんでしょうけど、なによりもまず自分が楽しいな、と思えるものじゃないとやっぱりいいものにはならないかなと思います。乗ってみたいとか、仲間を広げられるとか。僕は完全にクルマオタクなので、運転の楽しさをできるだけ知ってもらえるような考えでやっていますけど。自分が楽しいと思えるものをコンセプトにした方がいいんじゃないですかね。
司会
鵜殿さん自身は運転免許証をまだ持っていないですが、運転する楽しさを伝えたいという思いは、どのようなところから来ているのでしょうか?
鵜殿
クルマって「愛車」と呼ばれることがあるじゃないですか。あとは似たような言葉で「愛機」とかがありますけど。機械に対して「愛」が付くものって本当に少なくて、パイロットが戦闘機に対してとか、カメラマンがカメラに対して呼ぶとか、かなり少ないですよね。そういうのって機械を操作する人がアクションを起こしたら、機械がそれに対してちゃんと応えてくれるモノに対してだけだと思うんです。カメラだったらシャッターを押したらちゃんと写真が撮れるみたいな。それは命令しているというよりは、こちらがやったことに対してちゃんと応えてくれるという信頼関係みたいなものだと思っています。
特に今、自動運転とか機械が全部やってくれる系のものが多いと思うんですけど、機械側がやるだけだと、単純に機械から行動を受けるだけで、完全に受け身になってしまうので、そうすると他の「愛」のつかない機械みたいに、それまでの楽しくって「愛」を注いでいたクルマに、誰も「愛」を注がなくなってしまうんじゃないかなと思って。なので僕は、自分が運転する楽しさでクルマに「愛」を持ってもらいたいな、という考えで今はやっていますね。
司会
なるほど。鵜殿さんは「愛」を持って接することができるマシンとの関係が好きなのですね。
鵜殿
はい。そういう価値を広げて、伸ばしていきたいと思っています。

鵜殿 正基さん【モビリティデザイン賞 高校生の部】高校2年

中1から毎年応募し、今回の受賞3回目で初めてリアルな表彰式とスケッチ講習会に参加できた鵜殿さん。
今回の作品は、位置情報ゲームのような日常生活+ゲーム的な楽しみ方が普及している中、クルマ+ゲームも出来るのではないかと考えてみたという。これまでの作品にも共通しているが、クルマの運転が楽しいものだと、より多くの人に知ってもらいたいとの想いで作品をつくる。その心は?と思った方は是非直上の本文を読んでもらいたい。趣味は珍しい車について調べること、ゲーム。

小路
ちょっと上から目線になるんですけど、自分が本当に描きたいものを描いて欲しいです。実は、っていうか本当のことなんですけど、僕は前に応募して佳作にも入れなかったので、今回はモビリティを追求してすごく斬新なアイディアを頑張って出そうとして、作品名とかデザインとか機能とかも全部考えて、本番用の紙に描いていたんですよ。本番用を半分ぐらいまで描いていて、そこで・・いや、俺これ描きたくないなと思って、ちゃんとした車を描きたいなと思って・・・で、もう全部ひっくり返しました。コンセプトから全部。最初は車椅子のような形だったのですが、そこから4輪にして車にして、場所も街中とかで使えるように考えていたんですけど、そこから農場とか田舎の方で使えるとかにして・・。なので本当に自分が描きたいものと、今出ているアイディアをひっくり返して全部考えてみると、意外にいいアイディアが出てくるかも?しれないです・・・。
司会
最初何を考えて描いてました?この方が受賞するんじゃないかとか、ウケるんじゃないかとか?
小路
まさにそんな感じです。最初は受賞したいからっていう感じでした。でも自分が本当に描きたいものを描いて受賞したので、本当に嬉しくて。
司会
結構、期限ギリギリで描き直したのですか?
小路
はい。それでちょっと色が雑で。今見直すと白いところもあるし、恥ずかしいくらいで・・。
司会
そんなことないですよ。自分の描きたいもので受賞できて、本当によかったですね。

小路 裕紀さん【モビリティデザイン賞 中学生の部】中学2年

将来カーデザイナーになることが夢で、その夢に少しでも近づくために、今できることすべてを作品に込めたという小路さん。
今回の作品は、農村部に移住した若い人たちが田舎暮らしを楽しめる乗り物だが、自分の従兄や祖父母の暮らす自然豊かな地域の生活を参考にして、家族との生活や環境問題を取り上げた。田舎には美しい自然を始め、その不便さを補って余りある魅力があり、また不便さそのものにも楽しめる価値があると考えた。ハマっているのは車のデザインを考えてスケッチに描くこと。音楽や自転車も。

寒河江
ある程度描き進めた後に行き詰まった時の話なんですが、いろいろな視点で見られたら一番いいのかなと思っていて。自分で遠くから見たり、近づいて見たり、逆さにして見るとか、そういう試行錯誤はしてもいいんですけど、それだと限度があるので、親とか兄弟、友達とかに見てもらって、意見を言ってもらったのが一番よかったなと思っています。今回も友達に送りつけて・・批判とか、これは良くないんじゃない?とか、言われる覚悟みたいなのは必要なのですが、いろんな視点で見るっていうのは自分を客観視する意味もあって、いいのかなって思います。
司会
人に言われて迷いが生じることはありませんでした?
寒河江
あります。ありますけど、そうなったら逆に自分が好きなことをやり始める方がいい。結局は自分で決めるので。友達の考えを聞いてみるのもいいよねって、笑。
司会
人に見せるのは勇気がいることですよね。それはコンセプトも造形も両方ですか?
寒河江
コンセプトが決まったあとですね。コンセプトが決まったらフォーム(形)とかを考えると思うのですが、フォームの候補が何個か生まれた時に送りつけるとか、どれが良い?とか結構やります。
峯岸
自分はクルマが大好きですが、今回は全然クルマに関係ない、クルマの形もしていない、全然違う形のモビリティを作りました。それでもモチベーションを維持できた理由は、さっき(鵜殿さんが)仰っていましたが、「愛の」部分。なんでモビリティや自動車に対して、持ち主が「愛」を感じているかという、そういう根底の部分にあるところ。自動車に限らず、自分が乗り物に対して好きな理由が、レスポンスが返ってくるからっていうことがあるので、そこをブレないようにしました。これだけは変えちゃいけないなっていう根底の部分を設定しておいてから、発想したアイディアをそれに合う形で変化させていけば、おのずと楽しい制作になると思いました。
藤木
私は提出日直前までアイディアが浮かばなくて、もう泣きそうになりながら、動かしたくない頭で・・お風呂に入っていたんですよ。その時に自分の好きな色合いとかを、ぼーっと思い浮かべていたら、だんだんと完成形のクルマに近づいていくことができました。
だから白い紙を前にしてじっと考えるよりも、何でもいいから行動することがアイディアにつながると思っていて、私の普段の創作活動に影響しているのは、日頃の友達との遊びとか、部活動とかが何かしらのアイディアが浮かぶきっかけになっていると思うので、とにかくじっとしてるより、自分から行動することが大事だと思っています。
司会
苦しかったのはコンセプトですか?それとも形?
藤木
いや、全部です。私はその本体(全体像)が決まらないとテーマとか題名とか決められないので、まずどういう形のものにしようかなっていうのが、クルマの知識が全然無さ過ぎて全然思い浮かばなかったので、まず一番最初にそこでつまずきました。
司会
先に、人を癒すタクシーを作ろう!とかじゃなくて?丸ごと?
藤木
そうですね。全部、形やアイディアもまとめてバッと出すタイプなんです。
司会
でも出したあとは早そうですね。
藤木
そうなんです。決まればいろいろと早くて、そこからは楽しいんですけど。
山口
僕はアイディアを出す過程について話したいのですが、やっぱりまずは自分の身の回りの問題で、今回だったらゴミ出しということなんですけど、その製品を作って、自分だけが価値とか恩恵を受けられるっていうのではだめだと思っています。それがみんなにも当てはまるかっていうのが大事かなって思っていて、今回の製品を実際に作ったと仮定すると、結構みんなにとって良くなるんじゃないかなって考えました。
1回アイディアが出たら現実的に製品として作れるのかを考えたほうがいいかなと思うので、その情報はゴミ収集車のことを調べたりして、実際に動くようには考えました。ただ今の時代インターネットとかが普及しているので、色々ネットで情報を探すことはできるんですけど、アイディアを出す際は、極力避けたほうがいいかなと思っています。
自分も経験してるんですけど、ネットの情報って結構自分のアイディアが出なくなるっていうのがあるので。あんまり影響されないというか、自分の考えをなくさない程度にした方がいいかなと思います。で、1回アイディア出たらどんどん肉付けしていって作品にする。最後はやっぱり自分が満足できるかっていうのが大事かなと思います。

山口 レオン 剛史さん【モビリティデザイン大賞】中学3年

アイディアを出す時にはネットを極力見ないようにしているという山口さん。自分のアイディアが出にくくなるからという。
今回の作品も、日頃から身の回りの問題にアンテナを張っている中から出てきたアイディア。家族がゴミ出しの日時・天候に悩まされていたからという。そしてそれが自分だけでなく他の人や社会にも役立つものかを考え発展させる。このクルマの透明な集積箱を見てゴミを減らそうという意識が少しでも高まってほしい、という思いを込めた。最近はファッションにも興味がある。

司会
作品を考える上で、昨年と今年で何か変化はありましたか?
山口
特に意識しなくて、「ゴミ収集車」というのは出てきたんですけど、身の回りのことの課題というのは、自分からアンテナを張るというか、それは大事かなと思っています。そういうのを意識していないと出てこないと思うので。意識していたら意外と身の回りに問題が潜んでいることがあると思うので。
司会
今回ゴミ収集車の機構を考えるのが、結構難しかったと仰ってましたけど、それはゴミ収集車のことを調べて、ゴミをプレスする機構とかを見て・・・?
山口
はい、かなり調べました。
司会
内輪差の話とかもですかね?8輪の構造にしたこととか?
山口
それは事故が起こっているっていうのを聞いたので、そういうことをしたら防げるんじゃないかなって思って。
司会
どの段階でインターネットを使わない方が良いと思いました?初期のコンセプト?それとも造形?
山口
造形は頭の中にある、いろんな形から考えることはできるんですけど、一番最初の段階は本当にやめたほうがいいかなと思います。・・・形が結構大事ですね。形が結構似てきているのが現状なので、インターネット見ちゃうとよくないかなって。
司会
ゴミ収集車というコンセプトを形に落とす時に、どういう構成にすればいいだろうかっていう段階ですね。そこで色々見ると情報が入ってきてしまう。今回でいえば、透明な箱でゴミを見えるようにしようとか、そういう部分はまず自分でしっかり考えて・・
山口
そうです。それで最後に現実的に動かなそうだったら意味がないので、それはちょっと機構とか調べたほうがいいです。
司会
そうやって自分で考えた方が、オリジナリティのある形が出せるんじゃないかってことですね。
山口
はい。
司会
皆さん、実感のこもった、たくさんの素晴らしいアドバイスありがとうございます。以上で質問は終わりです。本日は本当に表彰式から長い時間お疲れさまでした。ありがとうございました!
【インタビュー風景】左手前から時計回りで、寒河江美晴さん、峯岸季市さん、藤木真優さん、山口レオン剛史さん、鵜殿正基さん、小路裕紀さん、表彰式、スケッチ講習会に続いて大変お疲れだった中、一人ひとりの想いや考えをしっかりと伝えてくれました。本当に感謝です。
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